ボーダーライン。Neo【中】
妊娠検査薬の結果は、見事に陽性反応だった。
ーー檜の……赤ちゃん。
ずっと望んでいた結果だが、ようやく諦めがついた頃にこの妊娠は、言うまでもなく頭を悩ませた。
あたしはお腹に手を当て、複雑な想いに気を揉んだ。
ーー檜は何て言うだろう? どんな反応をする??
まさか堕ろすなんて考えられない。
幾つもの想いが交錯し、ただただ逡巡するばかり。
あたしはソファーに腰を沈めたまま、壁に掛かるカレンダーに目を向けた。
今日の日付より二日後。
八月三十一日の枠に‘檜が帰国する日’と書いてある。
彼は恒例通り、今カイくんとロンドンにいる。
とりあえず、明日早退願いを出して産婦人科を受診しようと思った。
「……妊娠されてますね。今七週目に入った所ですよ?」
あたしと幾らかしか歳の変わらない女性医師は、毅然とした態度でそう言った。
ーー七週目。やっぱり妊娠、してたんだ。
嬉しい反面、やはり檜の事を思うと不安になる。
女性医師はあたしの不安を余所に内診の結果を話し始めた。
診察時、機械で撮影した子宮内のエコー写真を数枚机に並べ、医師はこれが胎嚢なんですが、と説明を始める。
「胎嚢?」
聞きなれない言葉に、あたしは首をかしげた。
「赤ちゃんの袋です」