ボーダーライン。Neo【中】
医師が指差す黒くぽっかりと空いた場所で、胎児は育つらしかった。
「この赤ちゃんの袋はしっかりしているのですが……。実は胎芽の姿が現時点では確認出来ないんです」
「え?」
ーーどういう事?
医師は僅かに顔を曇らせ、選ぶ様に言葉をついだ。
「単に隠れて見えないだけかもしれませんが。心拍確認が出来ないので、来週か再来週……また予約を取って来て下さい」
ーー心拍確認が出来ない?
それはつまり、赤ちゃんが生きているのかどうかを確認出来ないという事だ。
あたしは言われるがままに返事をし、来週の七日に予約を取った。
翌日の昼下がり。
檜からメールが届いた。無事、ロンドンから帰国したらしい。
【今空港着いて帰るところ(^^)土産渡したいからまた夜に会いに行くね? 仕事頑張って】
職員室でそのメールを読み、少し思案してから返事を打った。
【お帰りヽ(*´∀`)フライト疲れたでしょ?
うん。仕事定時に終わるからまた駅で待ち合わせしよ。
ちょっと……話したい事もあるの】
今夜、檜に会ったら妊娠の事を告げよう。そう決心をした。
その日の夜。あたしは仕事を終え、夕食のお惣菜を数点買ってから自宅へ帰った。
つわりの症状が酷くて、ここ数日はほとんどまともに料理をしていない。