ボーダーライン。Neo【中】

 既に合鍵を使って部屋で待っていた檜に、旅行のお土産を貰い、夕食のお惣菜をテーブルに並べた。

「そう言えばメールで言ってた話したい事ってなに?」

 食べ始めて間もなく、檜から話を振られた。

 あたしはサラダを口にするお箸を止め、彼を見つめた。

 何て言って切り出そう、そう迷っていただけに、檜の問いは有り難かった。

「昨日ね。仕事を早退して、病院に……行って来たの」

「え、どっか具合でも悪いの?」

 心配そうに眉を寄せる彼に、あたしはううん、と頭を振る。

 檜は眉をひそめ、一旦箸を置いた。それを合図に、あたしは妊娠の事実を告げる。

「お腹に……。赤ちゃんが出来たって」

 言いながら自分のお腹に手を当てて、不安から睫毛を伏せた。

 ちゃんと心拍を確認出来た訳では無いので、出来た、と。そう言って良いものか、若干の躊躇いはあった。

「え?」

 檜はキョトンとし、表情を固めている。

「今七週目に入ったところで、ちょっとつわりも有るんだけど。
 あたし。産んでも……良いよね?」

「は……?」


 ーーは? って。


 あたしは顔を上げ、檜を見つめ返した。

「赤ちゃんが出来たんだよ? 檜の」

 真顔で口を開かない檜に、あたしは確認するかの如く再三繰り返した。

「妊娠したの、あたし」

「妊、しん」

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