ボーダーライン。Neo【中】
そこでようやく意味が伝わったのか、檜の表情が一変した。
ギョッとした顔付きで息を呑み、狼狽から瞳をうろうろと漂わせた。
口を開き、何かを言いたい様子だが、言葉が出てこないのだと察する。
檜は明らかに困り果てていた。
眉間を歪めて黙り込む彼を見て、遂には感情が高ぶった。
「まさか。堕ろしてなんて言わないよね?」
「え、いや。違うよ、そういうのじゃなくて」
「なに?」
「俺、まだ十八だし」
檜は情けなくも眉を下げ、ただただ途方に暮れている。
ーーそんなの分かってる。
檜がまだ十八歳で高校三年生だと知っていて、あたしは彼との子供を望んでいた。
いざ、その場面になって、あたしはようやく現実を見た気がした。
ーー「実際、その局面に立ったら狼狽えるんだって。八つも年下の、それも高校生に。サチは依存し過ぎ」
ふと頭に浮かんだ美波の言葉が、あたしを深く落胆させた。
失望の二文字が、心に重くのしかかる。
自然と瞳に涙の膜が張り、視界が歪んだ。
「あたしと。結婚するつもりは無いって事?」
「ちがっ、そんなんじゃなくて」
檜を見つめたまま、キュッと唇を噛み、目からひとつふたつと涙を零す。