ボーダーライン。Neo【中】
状況を察し、どうして、と声がかすれた。
「どういう、事ですか?」
自然と唇まで震え出す。
医師の話によると、出血や下腹部痛を伴わない稽留流産らしかった。
しっかりとした妊娠反応が有るのに、どうして、と疑わずにはいられない。
あたしは医師の話を聞きながら、固まった人形の様に涙を流した。
「特に桜庭さんが悪いとかじゃないの。原因の七割以上が染色体の異常等で、赤ちゃん側にあるんです」
医師にそう宥められても、現状を受け入れられず、まるで他人事の様に今後の処置を聞いていた。
病院で会計を済ませ、渡された書類と共に車に乗り込んだ。
エンジンをかけられず、暫く駐車場でさめざめと泣いていた。
這い上がる事の出来ない深い谷に、突き落とされた気分だ。
あたしは、好きな人の子供すら宿せない。
何度も何度も愛し合っていたのに、その形すら残せないなんて。
ハンドルにもたれかかりながら、襲いくる悲しみに嗚咽を漏らした。
やはり結婚を目的とした妊娠だったから、赤ちゃんも育ってくれなかったんだ。
女としても、母親としても、失格だ。バチが当たったんだ。
しゃくり上げながら、あたしは鞄の中のスマホを手にした。
少しでも愛しい人の声が聞きたくて、迷わず発信する。