ボーダーライン。Neo【中】
『もしもし?』
「……っ、た」
檜にはあらかじめ今日が検診日だと伝えていたので、「駄目だった」と言いたいのに、悲しみに沈められて上手く言葉が出てこない。
『幸子? 大丈夫か?』
檜の声を聞きながら、何気なくカーナビのデジタル時計を見やる。
ーーああ。まだ授業中だった。
あたし、檜の邪魔ばかりしてる……。
『……ごめ、授業中だったよね。あたしは。大丈夫だから』
何とかそう言って、静かに洟を啜る。
『今、まだ病院?』
「え? ううん。今、車。これから帰るところ」
『俺、今から家に行くから』
「え? でも檜、学校じゃ……」
『今ホームで電車待ってるところ。学校はサボったから』
「え……」
『何かあったから電話してきたんだろ? 今から会いに行くから』
「……っ、うん」
檜の想いが嬉しくて、あたしはそこで泣くのをやめた。
けれど家に着いてから、病院で貰った書類を目にすると、また悲しくて泣けてくる。
学校帰りの檜が部屋に着いても、あたしは暫くの間泣き続けた。
原因を話す間もなく泣いていたので、檜はただ黙って抱き締めてくれていた。
涙腺がひとまず落ち着き、あたしは檜と並んでソファーに腰を下ろした。