ボーダーライン。Neo【中】
「あたしね。ずっと思ってたの。妊娠したら檜と結婚出来るって」
「…….え?」
ポツリポツリと自分の想いをさらけ出す様に言葉を紡いだ。
「だけど美波には叱られた。子供は結婚する為の道具じゃないって。ほんと、その通りだよね」
言いながら自嘲気味に笑う。
「あたしがそんな浅ましい事考えてるから、赤ちゃんも育ってくれなかった。
こんなあたしじゃ……っ、親になる資格ないよね……っ」
もう泣かないでおこうと決めていたのに、唇は震え、語尾は涙まじりになった。
「幸子は悪くないよ」
檜はあたしを抱き寄せ、宥める様に頭を撫でた。
「幸子が俺と結婚したいって思ってくれたのは、素直に嬉しいから」
「ほんと?」
顔を上げて弱々しく訊くと、彼はコクンと力強く頷いた。
「……あのさ。幸子の親ってこの事知らないよな?」
唐突な言葉に意表を突かれ、あたしは、え、と声を上擦らせた。躊躇いがちに首肯する。
「う、ん。こんなの……言える訳ない」
まだ檜には話した事は無いが、ただでさえ学歴職種にこだわる頭の固い親だ。
結婚もしていないのに、妊娠したなんて告げたらどんな反応をするか想像もつかない。
あたしは母親の顔を思い浮かべ、唇を噛んだ。