ボーダーライン。Neo【中】
「今日、午後イチじゃなかったっけ?」
仕方なく足を止め、茜を見た。
「そうだけど。竹ちゃんからの連絡で社長室に来いって」
「竹原さんが? わたし全く聞いて無いんだけど」
「ふぅん」
ーーどうでもいいけど、一般人の前だぞ。
僕は茜から視線を逸らした。
「まぁ、その話し合いはそっちで任せるから」
ホウレンソウが行き届いていないのなんて、正直僕には関係ない。
それより、時間に遅れる方が大問題だ。
さっきからビシビシと遠慮なく視線を向ける、スーツ姿の営業マンをサングラス越しに見やり、「お疲れ様です」と言って会釈する。一応、失礼しました、という意味も込めて。
こげ茶色の髪をした人と黒髪の人だ。茶髪の彼は愛想よく「あ、どうも」と笑いかけてくれたが、黒髪の彼はどこかムスッとしたような表情で僕を見ていた。
ーー何だろう? アンチHinoki、とかかな?
まぁ、目立つ職種に就いているので、嫌われる事もあるだろう。気にせず先を進んだ。
廊下の角を曲がると、その扉の前にカイと竹ちゃんが立っていた。
カイは腕時計に向けた目を上げ、お早う、と右手を挙げる。