ボーダーライン。Neo【中】
◇ ♂
事務所内の廊下で、竹ちゃんの背中に呼び掛けた。
「今日社長の戻りって遅いの?」
振り返った竹ちゃんは、え、と一瞬目を丸くする。
「ああ……。社長は今度仕事をする制作会社と食事会だと聞いてるけど。
何だ? この間振られた例の話。返事が決まったのか?」
「……まぁね」
僕は小さく笑い、曖昧に言葉を濁した。
「そうか。社長の戻りは夕方六時頃って聞いてるけど。
それも確実じゃ無いみたいだから、昼に電話で伝えておくといい」
「分かった」
それじゃあ、と手を上げて立ち去ろうとすると、竹ちゃんは不意に何かを思い出した様子で「あ」と呟いた。
「もしかして。この間茜ちゃんが檜を探していたのもその用件だったのかな?」
「え?」
ーー茜が?
ふと足を止め、振り返る。
「先週二葉さんって記者と話しただろう? その時茜ちゃんに檜の居場所訊かれたからさ。それも真剣な顔で」
「……上河が?」
「あれ? 会ってないのか?」
不思議そうに訝る彼に、僕は仕方なく頷いた。
「そっか、変だな。確か休憩室の方に行ったと思ったんだけど……何か別の用事でも入ったかな?」
ーーえ、