ボーダーライン。Neo【中】
幸子への初恋を思い出として消化して、別の女性を好きになる。そうしたら今抱えている寂寥感もなくなり、胸に空いた空洞もちゃんと埋まる。
僕は再びソファーに座り、スマホを点けた。電話帳のアイコンから彼女の番号を表示させ、電話を掛けた。
『……も、もしもし?』
電話の相手である茜の声は、若干震えていた。一瞬、どうしたのだろうと口を噤むものの、「俺だけど」と言って話し掛けた。
「茜に訊きたい事がある。今大丈夫か?」
『……うん』
やはり、茜の声は暗い。らしく無いなと感じた。
「一昨日、俺を探して休憩室の前まで来た?」
『え……?』
「そこで……何か聞いた?」
茜は幾らか沈黙するが、ややもすると『うん』と弱々しく呟いた。
『檜があの記者に言ってた事、聞いた』
「そっか」
ーーやっぱり。
正直、全く関係の無い人に聞かれたんじゃなくて良かったと安堵する気持ちもあった。
茜はFAVORITEのマネージャー補佐だから、どちらかと言えば身内だ。だから僕にとって不利になる発言はしないと信用できた。
黙ったまま考えていると茜がぼそりと言った。