ボーダーライン。Neo【中】

/現在


 ◇ ♂

 【明けましておめでとう。去年の事がどうしても忘れられない。お互い誰にも言えない事なんだから、俺はバラすつもりもないし身構えないで欲しい。
一度会って話したいんだけど、】

「ウザイな……脅迫かよ」

 僕はスマホと睨めっこしながら、打ち込んだ文章を即座に消した。

 【明けましておめでとう。あんな事があった後で、幸子が俺に会いにくいのは分かる。でも俺は、もう一度会って話しがしたい。どうしても幸子の事が頭から離れないんだ、だから】

「いやいや、これじゃあ重すぎるだろ」

 【明けましておめでとう。会えるなら時間は深夜でも明け方でもいいよ。また連絡ちょーだい】

「……何キャラだよ」

 数時間前。年が明けたばかりの正月深夜。

 カウントダウンライブを終えた後、僕は通された楽屋でスマホ片手に頭を抱えていた。

 ちなみに僕以外のメンバーは別の収録があるので、部屋には僕一人だ。

 クリスマスの翌日。電話で声を聞いてから幸子とは全く連絡を取っていない。

 どのタイミングでメールを送ろうか考え、結果、正月のあけおめメールを利用しようと思いついた。

 このどさくさに紛れてメールを送れば、何かしら良い返事を貰えるかもしれないと踏んだのだ。

 幸子に対して、何てメールしようか悩むなんて高校生以来だ。

「Hinokiさーん、そろそろメイク室へお願いします」

「あ、ハイ」

 机上に置いたペットボトルの水を口にして、僕はスマホにタタッと文字を打ち込んだ。

***

< 2 / 284 >

この作品をシェア

pagetop