ボーダーライン。Neo【中】

 檜は困ったように眉を下げ、あたしに目配せをした。どうしよう、と表情(かお)に書いてある。

 あたしは向かいの母親を見て、覚悟を決めた。

「お母さん。彼はまだ十八歳で、高校生なの」

「こう、」と表情を固め、母はあからさまに顔をしかめた。

「はぁ!??  高校生??」

「ええ」

「ええ、って幸子。まさか教え子さんじゃないわよねぇ!?」

 予想通りの反応だが、こうも大っぴらだと嫌気がさす。

「二年の時。彼のクラスを受け持ったの。今は担任じゃないけど、教え子よ?」

「幸子、あんた……っ」

 母の目は、信じられないと物語っていた。

「勿論、怒られる覚悟は出来てるわ。
 あたしも彼も。そんな簡単に許して貰えるなんて、思ってな」

「じゃあ別れなさい!」

 あたしは顔をしかめた。

 取り繕う事もなく、怒りを露わにするという事は、絶対に認めない、もう二度と会うつもりも無いという母の意思だ。

「寄りによって教え子と付き合うなんて! 第一、結婚を考えた付き合いって何!? あんたこんな若い子と、まさか体の関係なんて」

「母さんっ!」

「お父さんは黙ってて!!」

 途中で止めに入る父を一蹴し、母はあたしを睨んでいた。
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