ボーダーライン。Neo【中】

 それでも冷静な面持ちでお母さんを見つめていると、急に彼女の顔色が変わった。

「……まさか幸子。妊娠なんて……してないわよね??」

 その詰問に、暫時口を噤み、してないわ、と素っ気なく答えた。

「そっ……」

 大袈裟に安堵の表情を浮かべ、母は胸を撫で下ろす。

 こんな反応をされたら、妊娠したけれど流産した、なんて……とてもじゃないけど言えない。

「お母さんは……今現在のあたし達を見て、別れた方が良いって言ってるんでしょ?」

「そうよ?」

「じゃあ卒業後は?」

「え……」

「彼が卒業するまでもう五ヶ月もない。結婚はそれからって考えて」

「仕事はどうするの??」

「勿論あたしは続けるわ。もし子供が出来てもちゃんと産休は取れるんだし、その為の公務員な、」

「あんたじゃなくてこの子の!!」

 あたしの言葉に被せ、母は厳しく責め立てる。

 あたしから目を逸らし、母は檜を見据えた。

「卒業後の進路はどうするつもりなんですか?」

「……え?」

「進学はどちらの大学に??」

「え、……と」

「それとも就職をされるの??」

 矢継ぎ早にされる質問に窮し、檜は口を噤んでいた。
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