ボーダーライン。Neo【中】
/現在
◇ ♀
お弁当屋さんの仕事を終え、夕方五時過ぎに帰宅した。
エレベーターで四階まで昇り、部屋の扉に鍵を刺したところで、それに気が付いた。
「あれ?」
ーー嘘でしょう? 鍵が、開いてる?
仕事に出る前、ちゃんと施錠した事を確認したので鍵のかけ忘れではない。
もしかしたら、慎ちゃんが急な用事で帰って来たのかも……。
出来るだけ良い方に考え、恐る恐る扉を開ける。
「慎ちゃん……? 帰ってるの?」
玄関の三和土《たたき》を見下ろすが、当然の事ながら彼の革靴は無い。
いつもの様にそこで靴を脱ぎ、おずおずとリビングの扉を開ける。
ーーっ!?
ありとあらゆる物で散乱した室内を見て、愕然となった。
ーーもしかして、泥棒?
あまりそうは考えたく無いが、キッチンの食器棚やテレビのサイドボード、カウンターの引き出しが無造作に荒らされ、中身が床へばら撒かれている。
あたしはその場に座り込み、直ぐさま彼に電話を掛けた。
ちょうど手が空いているところだったのか、慎ちゃんは数回のコール音で電話に出てくれた。
『もしもし? どうした?』
「あ、慎ちゃん? ど、どうしよう。家の鍵、開いてて。部屋がめちゃくちゃで」