ボーダーライン。Neo【中】
どうして通帳やカードの類いはちゃんと有るのに、日記帳だけが無くなっているんだろう? どう考えても変だ。
まさか檜の周りで何かトラブルが起きていて、元カノであるあたしの所に何かを探りに来た、とか?
「……」
ーーいやいやいや。
考えてから、想像した自分に苦笑する。ドラマじゃ有るまいし、そんな奇天烈な事はめったに起こらないだろう。
あたしは不安に眉を寄せ、傍らに置いた携帯を見つめた。
とりあえず警察は呼ばなければいけない。
他に何が盗られたのか分からないし、空き巣の場合、また戻って来る可能性もある。
画面をタップし、急いで110番へ発信した。
警察を呼び、数分後に慎ちゃんが帰宅する。
「サチ、大丈夫か? 何か盗られたものは?」
「分かんない。まだちゃんと見てないから」
あたしは嘘をついた。
あたしの私物である日記帳だけが無くなっているなんて、言える訳がない。
日記の内容について、慎ちゃんに勘ぐられるのも避けたい。
あたし達は部屋の隅に突っ立ったままで、暫くの間は居心地の悪い思いを強いられた。
数人の、鑑識と呼ばれる人が部屋の現場検証を行っていた。