ボーダーライン。Neo【中】

 部屋の電気を消し、特殊なライトを当てたり、所々で粉をはたいて指紋を取ったりしている。

 その様を見つめて慎ちゃんは嘆息し、僅かに眉を寄せた。

 部屋の住人であるあたし達も事情聴取に応じて、何枚もの書類にサインをさせられた。

 犯人と区別するためには仕方のない事だが、親指から小指、手のひらまでもの指紋を取られたのは最悪だった。

 時間を掛けて散在を調べて貰ったのだが、幸か不幸か、部屋からは何も盗られていない、そういう結果に落ち着いた。

 勿論警察の人は納得しかねていた。

「本当に空き巣ですかねぇ?」

「え?」

「見たところ、泥棒さんの靴跡も無いし。奥さんか旦那さん、どちらかがこれやったんじゃないの?」

 ーーは?

「ち、違いますっ!」

 妙な疑いをかけられても困る。あたしは即座に否定した。

「まぁまぁ、サチ。落ち着けって」

 あたしと違い、慎ちゃんはどこまでも冷静だった。

 彼らが撤収する時も、数人の警察官に、ご苦労様です、と頭を下げて挨拶していた。

 ーーやっぱり、あたしと違って大人だなぁ。

 しっかり外で働いて社会人をしているだけあって、礼儀が行き届いている。
< 213 / 284 >

この作品をシェア

pagetop