ボーダーライン。Neo【中】

「……いたッ」

 ぶちぶちと数本の髪の毛が抜ける。頭を掴まれた状態で玄関口に連れ出され、勢い良く外へ突き飛ばされた。

「きゃあっ!!」

 その拍子に、今度は地面へと転がった。

「ここは元々俺の部屋なんだから、文句は無いよな!??」

「慎ちゃ……」

「もう二度と俺の前に顔を出すなよ、じゃあなっ!!」

 そこでバタンと扉が閉まった。

「慎ちゃん! お願い、開けて!!」

 ガチャリと施錠する音を聞きながら、涙ながらに訴えるが、中からの返事は無い。代わりに、テレビの雑音が耳に届いた。

「慎ちゃんっ!!」

 ドンドンと扉を叩いていると、ガチャッと隣りの人がドアから顔を覗かせ、怪訝な目であたしを見ていた。

 不意に居た堪れなくなり、あたしは叫ぶのをやめた。

 どうしよう、と急に冷静さを取り戻す。

 手に持って出たのは二冊の日記帳のみで、財布も携帯も無い。

 勿論、無理やり締め出されたので靴も履いていない。

「うぅ……っ」

 あたしは頬を押さえたまま、静かに泣き崩れた。

 まともに拳を受けたから、これからどんどん腫れてくるだろう。

 執拗に腹部を蹴り上げたのは、檜との妊娠の可能性を疑ったのかもしれない。

 何にしても、体中が痛くて堪らない。きっとあちこちに痣が出来ているだろう。

< 220 / 284 >

この作品をシェア

pagetop