ボーダーライン。Neo【中】
「……いたッ」
ぶちぶちと数本の髪の毛が抜ける。頭を掴まれた状態で玄関口に連れ出され、勢い良く外へ突き飛ばされた。
「きゃあっ!!」
その拍子に、今度は地面へと転がった。
「ここは元々俺の部屋なんだから、文句は無いよな!??」
「慎ちゃ……」
「もう二度と俺の前に顔を出すなよ、じゃあなっ!!」
そこでバタンと扉が閉まった。
「慎ちゃん! お願い、開けて!!」
ガチャリと施錠する音を聞きながら、涙ながらに訴えるが、中からの返事は無い。代わりに、テレビの雑音が耳に届いた。
「慎ちゃんっ!!」
ドンドンと扉を叩いていると、ガチャッと隣りの人がドアから顔を覗かせ、怪訝な目であたしを見ていた。
不意に居た堪れなくなり、あたしは叫ぶのをやめた。
どうしよう、と急に冷静さを取り戻す。
手に持って出たのは二冊の日記帳のみで、財布も携帯も無い。
勿論、無理やり締め出されたので靴も履いていない。
「うぅ……っ」
あたしは頬を押さえたまま、静かに泣き崩れた。
まともに拳を受けたから、これからどんどん腫れてくるだろう。
執拗に腹部を蹴り上げたのは、檜との妊娠の可能性を疑ったのかもしれない。
何にしても、体中が痛くて堪らない。きっとあちこちに痣が出来ているだろう。