ボーダーライン。Neo【中】
/現在
◇ ♂
「昨日、桜庭先生に会ったよ? 夜の十時半頃、だったかな?」
「え?」
翌日。仕事の空き時間に、カイが何気なく言った。
「何でそんな時間に幸子が? どこにいた?」
事務所の楽屋には陸と陽介も居るのだが、元カノの事をつい名前で呼んでいた。
「そこの繁華街。桜庭先生、靴も履かずにうろうろしてた」
ーーえ?
「そうそう、俺らも一緒だったんだけどさ。彼女、顔に青あざ出来てたよ?」
「いやいや、青あざどころか。首に絞められた跡も有ったで?」
ーーえ、え??
聞けば聞くほど不安に襲われる。
「……あ、青あざって何で? 首絞められたって、靴も履いて無かったって??
な、何ですぐ俺に言わねぇんだよ!??」
怒って思わず立ち上がっていた。
「言わなかったんじゃなくて、言えなかったんだよ。桜庭先生、どうしてもヒノキには知られたく無いからって。
本当は今日、今ここで言うのもNGなんだからな?」
「何で……っ」
そのまま頭を抱え、元の椅子に座り込んだ。
「理由は俺からも訊いたけど、先生何も答えなかった。
だからとりあえず病院にだけ連れて行って、先生の実家に送り届けた」