ボーダーライン。Neo【中】
何をどうすればそんな酷い格好で町をふらつく事になるのだろう?
僕はスマホを取り出し、一旦電話帳を開くが、またホームボタンを押して画面を消した。
「……けど」
「けど?」
カイの台詞におうむ返しに訊ねる。
「多分、俺らが思うに、あれは男の手で殴られたものだった」
ーー男の手で?
嫌な予感が頭に浮かび、眉を寄せた。
「それに先生、靴を履いてないどころか、財布と携帯も無くて。ノート二冊を大事そうに抱えてた」
ーーもしかして。
「婚約者がやったのか……?」
「え?」
カイを始め、陸と陽介が首を捻っている。
「幸子、今の婚約者と同棲してるって言ってた。
何かが原因で喧嘩になって、部屋を追い出されたの、かも……」
「え。殴られた上、締め出しくらう原因って……?」
どんな酷い彼氏だよ、と言って、陸は口元を歪めている。
思い当たる節は有った。
寧ろ、原因はそれしか無いと、僕は臍を噛んだ。
恐らくは、僕との浮気がバレたんだ。それをカサイという彼氏に責められて、暴力を振るわれたのだとしたら……。
ーー俺にも責任がある。
しかめっ面で黙り込んでいると、機を狙ってか、手の中の携帯がブルブルと震えだした。
マナーモードにしたままのそれを開き、電話の相手に意表を突かれた。
「えっ!」
「誰?」
カイが訝しみ、僕のスマホを覗き込む。