ボーダーライン。Neo【中】

「とりあえずは、実家から通える所で仕事を見付けるよ。前に勤めてたお弁当屋さんも辞めちゃったし……今は貯金が無いと一人暮らしも出来ないから」

「……まぁ、うん、そうだね。今後の生活については、働くのが第一だけど。あたしが聞きたいのは、檜くんの事」

「え?」

 その名前にドキッとする。

「結婚が駄目になって、サチもやっと自分の気持ちに気付いたよね? 檜くんの事、まだ好きなんでしょう?」

 あたしは眉を寄せ、曖昧に視線を落とした。

「檜くんに未練があるから、葛西さんとも上手くいかなかったんでしょ? やり直したいとは思わないの?」

「……思うよ」

「だったら、」

「でも、今更もうそんな事言えない。檜とは、誕生日の日にちゃんとサヨナラしたし。もう、これ以上困らせたくないの。それに向こうだって、もうあたしの事なんか、ちゃんと忘れて」

「忘れてるわけないじゃん! あの子の一途さはサチが一番よく知ってるでしょ?? きっと今でもサチの事が好きだよっ!」

 あたしは唇を噛み、ぶんぶんとかぶりを振った。

 微かに視界が歪み、涙が押し寄せそうな気配をグッと堪えた。

「あたしは、檜の邪魔をする自分が、一番嫌いなのっ。好きなのに、彼のしたい事について応援出来ないなんて、普通あり得ないっ」

「でもそれは、過去の話でしょ?」

「え……」

 ーー過去?

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