ボーダーライン。Neo【中】

 今は違うんじゃないか。そう言われた気がして、言葉につまる。

「いっぱい傷付いて、傷付けて。沢山泣いた分、サチは強くなった筈だよ? まさかこのまま、誰とも恋愛しないで死ぬつもり?」

 あたしはそこで何も言えなくなった。

 この先誰も好きにならずに、結婚も出来ずに、孤独死するなんて……そんなの考えた事も無かった。

 あたしは檜が好き。きっともう一生心変わりする事は無い。

 檜に会いたい。会って気持ちを伝えたい。

 そう思うのに、今さら虫が良すぎると内側であたしをなじるあたしが居るのも確かだ。

 自分の都合で散々檜を傷付けておいて、結婚が駄目になったから、じゃああなたと一緒になろうかなって。そんな低俗な考えが許されるはず無い。

 それに。檜もいい加減、あたしみたいな卑しい女は嫌に違いない。

 振られると分かっていて、気持ちをぶつける事なんて出来ない。そうやって逃げてるあたしは、臆病で卑怯者だ。

 美波の懸命な説得にも耳を貸さず、結局、檜との未来に関してはうやむやにしたまま家路を辿った。

 しかしながら、数日後。

 臆病で(かたく)ななあたしを変える出来事に出会った。

 六月十七日。本来なら慎ちゃんと結婚式を挙げている日取りだ。

 それは本屋さんで仕事情報誌を捲っている時の事だった。

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