ボーダーライン。Neo【中】
ふと、お店の有線から流れるラジオ放送に意識が向いた。
『えー、つい最近曲を出したばかりの彼らですが。このサプライズ・リリースはファンからしたら感激そのものですよねぇ? 佐藤さん』
『そうですね! 何の宣伝、告知も無く、今日いきなりの配信と発売ですからね~』
『そうそう。通常ではネットやCMなどで先行配信されたのち、CDリリースをするのが一般的ですよね?
一体どういう演出なのか、とリスナーをびっくりさせた彼らです!』
女性DJが、半ば興奮気味に解説している。
仕事情報誌を棚に戻し、一体どのアーティストの事を言っているんだろう、と何気なく首を傾げる。
「あ、知ってる! これ。今朝の番組でも言ってた!」
高らかにそう言ったのは、近くでファッション誌を捲る女子学生だ。
「見た見た! Hinokiが作詞作曲したんだよねっ!? 超バラードなやつ!」
ーーえ。檜が?
急に好きな人の名前を聞いて、心拍数が早まった。雑誌そっちのけで耳に集中する。
『はい。それでは聴いて頂きましょう。
FAVORITEで【Flower~僕からキミへ~】です!』
ーーFlower? それって確か……。