ボーダーライン。Neo【中】

 その店内でも【Flower】が流れ、さらには馴染みの無いあのフレーズへと差し掛かっていた。


 『今日からの(セブン)days

  キミを待ってる』



 “今日から一週間、そこで幸子を待ってる”




「……行かなくちゃ」


 ーーこれは檜からのメッセージだ。

 会いたいけれど、今さら会えない、なんて。そんな葛藤を抜きにして、ただ会いに行かなければいけない、そう思った。

 とりあえずは、CDを買って行こう。

 店内を見回すと、“FAVORITE、サプライズ・リリース”と書かれたポップがあり、そこには小さな人だかりが出来ていた。

 棚にズラリと並んだ一枚のディスクを手にした時、ドキンと大きく心臓が揺れる。


 ーーひまわり。


 表紙の写真は、ひまわりの花束を持つHinokiだ。いつものサングラスを掛けた彼が伏せ目がちに花を見つめ、微笑んでいる。


 【Flower】の歌詞で歌われる花はひまわりに違いないけれど、あたしは都合よく過去の会話を思い出していた。


 ーー「ひまわりの花言葉は、“あなただけを見つめてる”……何かロマンチックよね」


 ーーあなただけを見つめてる。


 何故かは分からないけれど、檜があの時のあたしの言葉をちゃんと覚えていて、そう言っているように見えた。

 CDジャケットの写真を見つめ、あたしは一粒二粒涙を落とした。

 ーー逢いたい……っ。檜に逢いたいよっ。

 それが例え国内じゃなくても、堂々と彼に会えるなら、直ぐにでも逢いに行きたい。

 溢れた涙を手で拭い、あたしはCDをレジへと運んだ。


 ***

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