ボーダーライン。Neo【中】
大学受験をする子、専門学校に進む子、それぞれが違った進路を選び、そのフォローに回るのが教師の役目なので、サービス残業もそれほど厭わなかった。
むしろ仕事をしているとどこか落ち着いた。
母に結婚どころか交際までもを非難され、ぽっかり時間が空くとその憂鬱に支配される。
デビューの知らせを聞いてから、檜の私生活も慌ただしく、二人で会ってその打開策を話し合う事をお互いが避けていた。
週に数回の電話と日々のメール。それだけであたし達は繋がっていた。
ガラステーブルに置いた携帯をジッと見つめ、考えていた。
このまま今ある問題から目を背けていても、何も変わらない。
母に放った言葉を詫び、まずは和解する必要があった。
同棲は出来なくても、このまま檜と付き合っていくには母の機嫌を取っておかなければいけない。
両手で包んだカップを置き、机上の携帯に手を伸ばす。
その時、ビクッと指先が震えた。急に着信が入ったのだ。
「え??」
ディスプレイには、同僚である斉藤里沙先生の名前。
ーー何だろう。仕事以外の休日にわざわざ電話を掛けてくるなんて、生徒に何か有ったのかしら?