ボーダーライン。Neo【中】
「……も、もしもし?」
『ーーあ。桜庭先生おはようございます。休日にすみません。今ちょっと、大丈夫ですか?』
「……え? ええ」
『実は。私もどう言ったら良いか分からないんだけど。
……その。上河茜ちゃん、って。分かります?』
「えっ??」
予期しないその名に、心臓がドキッと跳ね上がる。
『ほら、前に私と一緒に高村くんのライブハウスに行った時に会った、』
「ええ、分かります」
ーー檜とあたしの関係を疑っているあの子だ。
「その彼女が……何か?」
言いながら片方の手を添え、携帯を両手で握り締める。
嫌な予感がする、と胸がざわついた。
『実は。桜庭先生に会って話したい事がある、と。今電話を貰って』
「話したい事?」
『ええ。用件は秋ヒノやカイくんのバンドに関して。そう言って貰えれば分かるからって。どういう事??』
気付いた時には、さぁ、と首を傾げていた。
「……あたしも、よくは」
眉間を歪めながらも、思い当たる節にしらを切る。
『私もどうしようか迷ったんだけど、彼女が真剣に言うものだから無視も出来なくて』
斉藤先生は困惑して言い、上河さんの言づて通り、彼女の連絡先を言い残して電話を切った。
今しがたメモした十一桁の数字を前に、どうすべきかを考える。