ボーダーライン。Neo【中】
「そんな、急に何を言うかと思ったら。
秋月くんは生徒のひとりに過ぎないし、第一あたしには、ちゃんと別に彼氏が」
「否定するのは分かります。
わたしもわざわざその事に関して問い質すつもりは無いですし、確認の為に呼び出した訳でもありません」
「……え?」
「もちろん、会話の中でカマを掛けるつもりも無いんで。話だけを聞いていて下さい」
ーー何だろう。この自信。
キッパリとした彼女の口調に、僅かに胸がざわついた。
「わたしは今、檜くんの所属するプロダクションで、マネジメントの手伝いをしていて。今日はその立場として、先生にお願いしたいんです」
言いながら、彼女は机上の名刺入れからその一枚を差し出した。
“株式会社 アスナロ・レコーズ
マネージャー補佐 上河 茜”
以前、檜に見せて貰った社長の名刺と、確かに同じ会社だと思った。
受け取った名刺に一通り目を通してからテーブルへ置くと、上河さんのコーヒーカップの側に彼女の携帯が置いてあるのに気が付いた。
「つい先日、檜くん達はデビューに向けて、他社との契約を結びました。
けれど、そこへ至るまでに。ちょっとしたトラブルが有りまして」
「トラブル?」
「はい」
そこで店員さんから注文した紅茶が運ばれる。