ボーダーライン。Neo【中】
ーー檜。一人であたしの親に会いに行ったんだ……。
十月の上旬、彼と共に挨拶で実家を訪れた時。檜の将来に関しては、うやむやになったままで話が進まなかった。
ーー何でそんな大事な事、あたしに隠してたの??
それに、何で……っ。
こんな赤の他人の女の子に、あたし達の事を相談してるの??
檜が何を考えているのか分からず、あたしは膝の上のバッグを握り締めた。
「“付き合う条件として将来の夢を否定された”
檜くんはたったそれだけの事で、今まで積み上げたきた成果を全部無駄にしようとしたんです。今回は何とか説得してそうならずに済んだけど。
もし辞めていたらって考えると、わたしはどうしても許せないんです。
“彼女”って存在が檜くんにとって足かせになってるとしか思えない。……だから。
別れて貰えませんか? 檜くんの為に」
ーーこの子っ。
あたしはグッと口を結んだ。怒りで目眩すら覚える。
別れるのが彼女の言う“お願い”だとしたら、そんなの聞くつもりなんてない。
さも、檜の音楽活動を思いやって言ってる風だけど。結局のところは檜をフリーにしたいだけじゃないっ。
あたしは一つ息を吐き出し、手前のカップに口を付けた。湯気が消えて少し冷めていた。