ボーダーライン。Neo【中】

 否定は交際を認める発言に他ならないが、決定的な写真を前に、もう隠す手立ては無いと思った。

「あの人は……っ、檜は、あたしの全てなんです。別れるなんて、そんなの絶対に嫌です!!」

 バッグを握り締める手に力を入れ、懸命に想いを訴えた。

 しかしながら。

「……それは。先生の単なる我が儘ですよね?」

 当然、同調を得られる筈もなくバッサリと切り捨てられた。

「それに。わたしの知り得る常識で言ったら、教師と生徒が付き合うというのは、世間一般では許されない事なんじゃないですか?」

 常識の壁に為す術もなく、頬がカッと熱くなる。

「先生は。生徒と付き合う為に、教師になられたんですか?」

 何て嫌な言い方なんだろう、と心底彼女を疎ましく感じた。

「……檜くんは将来、必ずビッグになります。仕事に対して厳しい伯父がかなり期待してるんです。
 だから。そんな彼に、“教師と付き合ってるって事実”があるのは、今後大きなマイナスになる」

 ーーそんなの、わざわざ言われなくても分かってる。

「さっきも言いましたが、わたしは今日それをお願いしに来たんです。だからこの写真を、まさか学校のホームページに投稿する、……なんて。そんな真似はしたくありません」

 ーーえ。

 みぞおちの辺りに氷の棒がすり抜けたような寒気を感じ、内心では泣き出したい気持ちになった。
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