ボーダーライン。Neo【中】
/現在
◇ ♀
「いらっしゃいま、」
自動ドアをくぐる姿を見た瞬間、声が途切れた。
心臓がドキンと跳ねる。
カウンターを拭く手を止め、あたしは目を見張った。
大きめのフードが付いた黒のモッズコートに黒いキャップ、サングラスを合わせて、多少は変装しているようだが、彼が誰かは直ぐに分かる。
「久しぶり?」
檜はサングラスを外し、微笑を浮かべた。
顔を合わせるのは、およそ三週間ぶりだ。
しかし会わないでいた期間、何度となく檜の事を考えていた。夢にも見るぐらい、思い焦がれていた。
途端に動機が早まる。あたしは奥歯をグッと噛み締め、彼に背を向けた。
平常心を保つため、手にした台拭きを背後の流し台で洗う。
「何しに来たの?」
動揺を悟られてはいけない。声はわざとらしいほど素っ気なく響いた。
「何って。弁当を買いに来たんだけど」
ーーだったらわざわざこのお店に来なくても良いじゃない。
あたしの仕事場も、多分水城さんから聞いたんだ。
そう思うと、顔の中心がカッと熱くなる。
ドキドキしたらいけないと思うのに、檜が直ぐそこにいると思うと心拍が落ち着かない。
本当は会いに来てくれて、泣きそうなほど嬉しいはずなのに、そう言えないのは天邪鬼なあたしだ。
「いらっしゃいま、」
自動ドアをくぐる姿を見た瞬間、声が途切れた。
心臓がドキンと跳ねる。
カウンターを拭く手を止め、あたしは目を見張った。
大きめのフードが付いた黒のモッズコートに黒いキャップ、サングラスを合わせて、多少は変装しているようだが、彼が誰かは直ぐに分かる。
「久しぶり?」
檜はサングラスを外し、微笑を浮かべた。
顔を合わせるのは、およそ三週間ぶりだ。
しかし会わないでいた期間、何度となく檜の事を考えていた。夢にも見るぐらい、思い焦がれていた。
途端に動機が早まる。あたしは奥歯をグッと噛み締め、彼に背を向けた。
平常心を保つため、手にした台拭きを背後の流し台で洗う。
「何しに来たの?」
動揺を悟られてはいけない。声はわざとらしいほど素っ気なく響いた。
「何って。弁当を買いに来たんだけど」
ーーだったらわざわざこのお店に来なくても良いじゃない。
あたしの仕事場も、多分水城さんから聞いたんだ。
そう思うと、顔の中心がカッと熱くなる。
ドキドキしたらいけないと思うのに、檜が直ぐそこにいると思うと心拍が落ち着かない。
本当は会いに来てくれて、泣きそうなほど嬉しいはずなのに、そう言えないのは天邪鬼なあたしだ。