ボーダーライン。Neo【中】
まるで信じられないものを見るかのような不審な目つきで、彼はあたしを見ていた。

「それに芸能人のあなたは、あたしにとって都合が良かった。だって、そんなスキャンダルになりそうなネタ、あなたは誰にも言わないでしょう?」

 彼が無言で顔を曇らせる。

「そしたら、彼にもバレない」

 別にそこまで計算していた訳でもないのに、言葉はスラスラと口を伝って出て来た。

「あのメモは、捨ててくれたんだよね?」

 檜は無言で頷いた。

「ありがとう。それから……。ごめんなさい」

 あたしは深々と頭を下げた。

 一体何に対しての謝罪なのか。

 檜を傷つけてばかりのあたしは、あたしを酷い女だとなじった。

「分かった」

 パチンとシートベルトを外し、檜が体ごとこっちを向いた。

 ーーえ。

 瞬間、カッと内側から熱くなるのを感じる。

 彼は狭い車内で距離を詰め、あたしの頬に手を触れた。

 熱っぽい眼差しに視線を絡め取られる。

 魅惑的な茶色い瞳から逃れられず、見つめ返していた。

 どうしてそうなったのかは分からない。

 けれど、気付いた時には彼と口付けを交わしていた。
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