ボーダーライン。Neo【中】
唇にほんのりと柔らかな感触が伝わり、やがてはその動きに合わせて、唇を開ける。

 檜の舌が口内に刺激を与える。彼のそれを絡め取り、あたしも舌をうねらせた。

 片手で頭を抱えた滑らかな手も、檜特有の香りと息づかいも、全てあたしの欲しがっていたもの。

 彼の舌に歯列をなぞられ、チュッ、チュと唇を吸われる。キュンと下腹部が疼いた。

 ーー気持ちいい。

 頭の芯がぼうっと痺れ、いとも簡単に理性を手放してしまう。

 心地良いキスは、彼の唇から放たれるリップ音で終わりを迎えた。

 茶色の瞳をジッと見つめていると、彼は辛そうに眉間を歪めた。

 ーーえ、

「俺を好きだと嘘をついた事は。……これでチャラにしてやる」

 そう言ってあたしから顔を背けた。

 途端に恥ずかしくなった。

 彼との続きを期待していたあたしは愚かだと、彼に見透かされたのだろうか。

 再びシートベルトを締める檜に、ありがとう、と。ぎこちなく微笑むのがやっとだった。





 駅の裏手にある目立たない駐輪場前まで送って貰った。

「じゃあ、」

 またねという言葉を飲み込み、あたしは助手席を降りる。

 檜は虚ろな瞳でハンドルを見つめたままで、あたしに一瞥もくれず、車を出した。

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