ボーダーライン。Neo【中】

 ストーカー行為をされる恐れもある、そんなニュアンスを込めて言うと、彼女にもうまく伝わったらしく

「……それは」

 とか細い声で返ってくる。

「私を、心配して言ってくれてるんですか??」

「え」

 彼女の勢いに圧され、一歩後ずさる。

「……ああ。はい、まぁ」

 ーー……一応人として

「嬉しい」

 彼女は満面の笑みを浮かべていた。

 その笑顔が一瞬幸子とダブり、戸惑いを覚えた。

 昔、幸子にも似たような事を言った気がする。

 交際前、幸子は家から近いあのバーで、酔いつぶれるまで酒を飲む事があった。

 言うか言うまいか、迷いに迷った末、目の届かない場所では絶対に大酒を飲まないで欲しい、とお願いした。

 それに対して幸子は潔く、それならもう心配を掛ける真似はしない、とえくぼを浮かべて言った。

 諦めると決めたばかりなのに、どうしてこうも幸子との過去を思い出すのだろう。

 僕は眉を寄せ、俯きがちに吐息を漏らした。

「私、気をつけますね?」

 急に現実に引き戻され、ハッと顔を上げる。

「……あ、はい」

 プロ意識は高いが、その若さ故に、危機感というものには疎いんだな。

 そう思い、踵を返した。
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