ボーダーライン。Neo【中】
/現在
僕の前で問題となった週刊誌を手に、嫌がらせの如く透さんが朗読を続ける。
「“……笹峰の自宅付近で抱き合い、ふたりの仲睦まじい姿が確認出来た。今後どうなるのか見守りたい次第である”……って全然見守ってねぇし」
「透さん、砂糖は?」
「ん? ああ、いらねー。
あ、檜。このタイトル面白い、“キスしてもオチないはずが!?”だって! アハハっ!! ウケる!」
「とぉーるさんっ!」
彼のマグカップを手に、僕はしかめっ面で睨み付けた。
透さんは悪びれない様子で、悪い悪い、と軽く笑った。
笹峰さんとのスキャンダルがテレビで報道されてから、はや五日を数えていた。
あの日から一時活動を休止し、事務所が管理するビジネスホテルに、仕方なく身を隠している。
ちなみに僕以外のメンバーも、個人での活動を除いて、今、休止状態だ。
「で。どうよ? 缶詰め生活は?」
心配、と言うよりは寧ろからかいに来た彼を見て、平たいため息をこぼした。
「最悪ですよ。暇で暇で頭が腐りそう」
言いながら、ソファーへ座る透さんの手前へ、淹れたばかりのコーヒーを置いた。
サンキュ、と礼を言い、彼はひと口カップをすする。
「だから俺が慰めに来てやったんじゃん?」
僕はグラスでお馴染みの水を飲み、卓上に置いた週刊誌を一瞥する。