ボーダーライン。Neo【中】
「送ったんですよ、彼女を」
「送ったってまさか、優羽ちゃんとデート?!」
「な訳無いでしょ、たまたまバッタリ会っただけですよ、映画館で。しかもレイトショー後の」
「……へぇ?」
にやついた顔付きで灰皿を引き寄せ、透さんはそこに灰を落とした。
「で。深夜なのにタクるって言うから、危ないと思って」
「うんうん、まぁそこは紳士的で良い判断だよな。
でも何で檜は車から降りた? 車内で別れればあんな写真も撮られなかっただろーに」
それは、と少し言い淀む。
「それは?」
「……さ。笹峰さんが、ハンカチを忘れて行ったから」
「……」
「それを。返そうと思って、追いかけて」
透さんは目を丸くし、やがて、ふっ、と吹き出した。
「アハハハハッ!」
「な、何ですか」
事の全貌を話してもいないのに、笹峰さんが取った行動を全て読み取られている気がして、僕は頬を赤らめた。
「いやいや、なるほどねぇ。
それで? この写真を撮られるにはそれなりの経緯が有ったんだろ?」
「……それは、その。彼女が階段の段差でつまづいて。それを俺が支えて」
「ふぅん?」
なるほどねぇ、と呟き彼は尚もにやついている。
僕は水を飲んでやり過ごした。
「檜の何がそんなに彼女を本気にさせるのかね~?」
「え?」