ボーダーライン。Neo【中】
「なぁ、檜? お前優羽ちゃんが本当に転んだと思ってんのか?」
「え? はい」
言いながらキョトンと目を瞬いた。
「馬鹿だね~? 彼女実力派女優だぞ? 段差につまづく振りくらい、難なくやってのける」
ーー振り?
演技という事か、と考え、首を捻る。
「どうせ俺の言った通り、アドレスは無くしたって言ったんだろ?」
「あ、はい」
「自分からアドレスを渡すって手も二度は使えない。彼女は何をしてでも檜の心を自分に向けたかったんだろうなぁ?
故意に忘れ物をして、また会う口実を作るにしてもそうだ」
やはり事の全貌を見渡している彼に、僕はポカンと口を開けた。
「それで告白は? されたのか?」
何の尋問だ、と心の中で突っ込みながら、はい、まぁ、と曖昧に視線を逸らした。
「だけどわざとつまづいたって……。記者に撮られる恐れもあるのに」
言いながら、実際にそうなったし、と眉をしかめる。
「優羽ちゃんはそんなの、差ほど気にしていないと思うぞ?」
「え?」
「そりゃあゴシップ記事は痛いし、そのせいで檜と会うのに制限がかかるのも辛い。
けど彼女の人気はそんな事で揺るがないだろうし、二ヶ月もすればそのほとぼりも冷める」
透さんはにやついた表情から一転して、真剣な顔付きで言った。