ボーダーライン。Neo【中】
「……付きまとうって。まるでストーカーみたいな言い草だな?」
「実際、似たようなもんです」
僕は苦々しく笑い、ソファーの背もたれに背中をつけた。
一方的に連絡先や勤め先を調べ上げ、メールを送り、電話を掛け、客を装って会いに行った。
今後自宅まで尾行して押し掛けたら、僕は立派な犯罪者だ。
「こうやってホテル住まいなんかをしていると、今まで考えもしなかった事が、ようやく見えて来たんです」
僕は室内のインテリアをぐるりと見渡した。
「こんな所に閉じ込められて。考える時間だけは沢山有りましたから」
透さんは黙ったままで、僕の話に耳を傾けている。
「昔。彼女に別れを告げられた時、こう言われたんです。
“あなたと一緒だと、私は幸せになれない”って」
顔をしかめた透さんと視線がぶつかった。
「何で急にそんな事を言われたのか、ずっと分からなくて。ひたすら自問自答してました」
「……」
「だけど。今みたいな事態になって、気付いたんです」
僕は喉を潤そうとコップに手を伸ばすが、中身は既に空だった。
仕方無く、それを机上に戻した。