ボーダーライン。Neo【中】

「……付きまとうって。まるでストーカーみたいな言い草だな?」

「実際、似たようなもんです」

 僕は苦々しく笑い、ソファーの背もたれに背中をつけた。

 一方的に連絡先や勤め先を調べ上げ、メールを送り、電話を掛け、客を装って会いに行った。

 今後自宅まで尾行して押し掛けたら、僕は立派な犯罪者だ。

「こうやってホテル住まいなんかをしていると、今まで考えもしなかった事が、ようやく見えて来たんです」

 僕は室内のインテリアをぐるりと見渡した。

「こんな所に閉じ込められて。考える時間だけは沢山有りましたから」

 透さんは黙ったままで、僕の話に耳を傾けている。

「昔。彼女に別れを告げられた時、こう言われたんです。
 “あなたと一緒だと、私は幸せになれない”って」

 顔をしかめた透さんと視線がぶつかった。

「何で急にそんな事を言われたのか、ずっと分からなくて。ひたすら自問自答してました」

「……」

「だけど。今みたいな事態になって、気付いたんです」

 僕は喉を潤そうとコップに手を伸ばすが、中身は既に空だった。

 仕方無く、それを机上に戻した。

< 73 / 284 >

この作品をシェア

pagetop