ボーダーライン。Neo【中】
胸の奥がやはりモヤモヤとし、時にチクンと痛んだ。
ーー何を調子に乗っていたんだろう。
あの人気アーティストのHinokiに愛されて、あたしは有頂天にも似た気持ちを抱えていた。
それなのに、いつの間にか彼は別の女性を愛していた。こんな滑稽な話は無い。
「もー、マジで落ちるよね、Hinokiの熱愛記事! 笹峰優羽とか有り得ないし。あいつCMだけでもウザかったのに、ほんとムカつく」
コンビニに入って来た女子高生が友達と愚痴り合っていた。自然とそちらに耳が傾いた。
「だよねー。モデルのリナちゃんぐらい可愛ければまだ許せるのにね〜」
「えー。あたしはリナでも嫌だ。Hinokiが誰かのモノになるなんて有り得ないよっ」
女子高生は相当に落ち込んでいるらしく、語尾は涙交じりだった。
あたしは雑誌を持つ指先に、ぎゅっと力を込めた。
Hinokiを応援しているファンは、きっとみんなああなのだ。
誰であっても、彼の隣りに並ぶのは有り得ない。
あたしは今の自分に対して、決して後悔などしていないと強く言い聞かせた。
今ある現状にもそれなりに満足しているし、慎ちゃんへの愛情も結婚してしまえば自然と家族愛に変わる。