ボーダーライン。Neo【中】

 近くの店員さんを呼び止め、あたし達は注文を通した。

 店内はしっとりとしたジャズミュージックが流れ、程よい薄暗さだ。

 夕方四時半という時間帯もあり、比較的空いていた。

 入り口側を禁煙席、奥を喫煙席と分煙化され、あたし達は奥のテーブル席へ座った。

「結婚、もうすぐだね~」

 赤一色のストローをくるくると回し、美波は微笑を浮かべた。

 カラカラ、音を立てる氷が時折照明を反射し、煌めいている。

 あたしは紅茶の香りが立ち上るカップを見つめ、うん、と頷いた。

「ブライダルエステとかするの?」

「まぁ、一応」

「へぇ~、いいないいなー。あたしなんか相手すらいないもんなぁ」

 そう言って下唇を突き出すと、美波は平たいため息を吐いた。

「美波の場合は高望みが過ぎるのよ」

「んー、自分ではそんな事ないつもりなんだよ?
 だけど、結婚って言うと人生においてもの凄~く、重要な選択じゃない?
 だから本当に好きな人としたいし、付き合う相手にも妥協出来ないんだよね」

 “本当に好きな人”、“妥協出来ない”

 美波の結婚観を聞き、自分の選択に自信をなくす。

 あたしにとっての慎ちゃんは?


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