ボーダーライン。Neo【中】

 答えの出ない詰問を自分に投げて、眉を寄せる。

「……そうだね」

 カップを持ち上げ、紅茶を口にする。アールグレイの香りが口内に広がり、鼻からスッと抜けた。

 味わう余裕がある事に、あたしは幾らか安堵し、口元を緩める。

「そういえば二ヶ月ぐらい前。あたしあの子に会ったよ?」

「え?」

 ーーあの子?

 突然の話題にキョトンと目を見張る。

「檜くん」

 そう言って美波はストローに口を付け、アイスコーヒーを飲んだ。

 あたしはさっきまで見ていた誌面を思い出し、彼女から目を逸らした。

「テレビ局内で、なんだけど」

 不意に美波の台詞と、記憶の中の彼の台詞が重なった。

 ーー「美波さん。この間局内で会った」

 クリスマスの日。五年ぶりに再会した彼が確かそう言っていたはずだ。

「あの子って言うと違和感あるかもしれないけど。はっきり言ってやな奴になってた」

「……ええ?」

 あたしはそこで頬を緩めて笑った。

 無表情だった自分に、どこか不自然さを感じた。

 動揺してはいけない、とあたしは自分に言い聞かせる。
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