ボーダーライン。Neo【中】

 直接告げられた事は無いが、あの頃の美波もどこか檜を意識している素振りがあった。

 だから嫉妬心を向けられているんじゃないか、そう考えた。

 自分本位なあたしは、親友の苦言を素直に受け止める事が出来なかった。

 あたしは考えた。

 檜と会った事だけ語るのであれば、特に問題も無いだろう、と。

 表面的な事実だけ語るのであれば、別に隠しておく必要もない。

「あたしも会ったよ? 秋月くんと」

 美波はパッと顔を上げ、「え、いつ?」と目を瞬いた。

「十二月二十五日」

「クリスマス?」

「うん」

「へぇ。なんか運命的だね……?」

 ーー運命的?

 そういえば、あたし達が付き合った過去、交際を始めたのはクリスマスイブだった。

「……そう言われれば。そうかも?」

 何だろう?

 何となく嬉しくなって、あたしは笑みを浮かべた。

「何か話したの?」

「うん、少し。美波と会ったって事もあの人から聞いたし、結婚する事も、確認された」

「そっか」

「……何にも変わって無かった。あの頃と」

 あたしは去年会った彼を思い出していた。

 自動販売機の下に潜り込んだ婚約指輪を鮮やかに取ってくれた事。

 あの時の笑顔と優しさ。

 檜は五年離れていた時間なんて、全く感じさせなかった。
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