ボーダーライン。Neo【中】

 生徒に受験対策用の参考書を選ぶため、パラパラとページを捲り、中身を吟味する。その作業を数回繰り返した。

 その時、参考書の間に挟まったアンケート用のハガキが落ち、偶然その場にいた女子大生が拾ってくれた。

 正直なところ、彼女との出会いは全く有り難くなく、あたし達の交際に影を落とす結果となった。

 女子大生は上河 茜さんと名乗り、既にあたしを知っている風だった。その証拠にあたしが教師をしている事も把握していた。

 彼女曰く、つい先月のあたしの誕生日の前日に行った檜のライブイベントで、あたしとすれ違ったらしい。

 上河さんは、あたしが毎日肌身離さず身につけている向日葵のネックレスが目印になったと言う。

 口調は親しみ易く、人懐っこい印象を受けるが。

 檜の話題へ移ると、女性特有のいやらしさを感じた。

 上河さんは、檜の事が大好きだと言い、彼の彼女、つまりあたしの事を探っているようだった。

 知らないか、と問われ、当然知らないとシラを切る。

 彼女の詰問は何処か執念深く、遂には本心を語り出した。
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