イジメのカミサマ
ゴーン……と辺りに二度目の鐘の音が鳴り響いた。同時に、私の背後に小さな足音が近づいてくるのが聞こえる。
「加奈ちゃん……?」
振り返ると、光彩を失った目で志乃が私の手を見つめていた。
「ごめん志乃……間に合わなかった。暦は最初からこうするつもりだったの。彼女は敵だよ」
志乃は何も答えなかった。大切な母の形見を失った今、もはやその顔は抜け殻の様に虚ろだ。
「ごめんなさいクマさん……また守ってあげられなくて……せっかく復讐してカミサマになったのに……自ら悪魔に身を堕として……そしてこの世界でもクマさんを失って……」
「志乃? カミサマになったってどういうこと? 自ら悪魔に身を堕としたって何⁉」
だけど、彼女は深い深海の様な瞳でキーホルダーの残骸を見つめるだけだった。
私は彼女に問いただしかったけど、今はそんな余裕がないことも分かっていた。
現実世界で志乃の身に起こったイジメと、この世界で起こる出来事はリンクしている。
教室に閉じ込められ、大切な物を隠され、そして次に起こるのは――
「志乃、とりあえずここから離れよう! このままじゃ私たちは危険なの!」
「…………」
茫然と立ち尽くす志乃の手を掴んだその時、片手に持っていたクマのキーホルダーの破片がバラバラに弾けた。
「どうして僕を見捨てたりしたの……?」
黒い霧と共に破片が集まって形を取り戻し、あっという間に膨れ上がっていく。
「絶対に僕を手放さないって言ったのに……」
そして膨張が収まった時、そこには優に三メートルを超える禍々しいクマが屹立していた。この大きさになると、キーホルダーというより本物の巨大熊みたいだ。
「違うの……私だって手放したくなかった……ごめんなさい……ごめんなさい!」
「志乃! 逃げるよ!」
私は、謝り続ける志乃の手を無我夢中で引いて林の中に駆けだした。
「加奈ちゃん……?」
振り返ると、光彩を失った目で志乃が私の手を見つめていた。
「ごめん志乃……間に合わなかった。暦は最初からこうするつもりだったの。彼女は敵だよ」
志乃は何も答えなかった。大切な母の形見を失った今、もはやその顔は抜け殻の様に虚ろだ。
「ごめんなさいクマさん……また守ってあげられなくて……せっかく復讐してカミサマになったのに……自ら悪魔に身を堕として……そしてこの世界でもクマさんを失って……」
「志乃? カミサマになったってどういうこと? 自ら悪魔に身を堕としたって何⁉」
だけど、彼女は深い深海の様な瞳でキーホルダーの残骸を見つめるだけだった。
私は彼女に問いただしかったけど、今はそんな余裕がないことも分かっていた。
現実世界で志乃の身に起こったイジメと、この世界で起こる出来事はリンクしている。
教室に閉じ込められ、大切な物を隠され、そして次に起こるのは――
「志乃、とりあえずここから離れよう! このままじゃ私たちは危険なの!」
「…………」
茫然と立ち尽くす志乃の手を掴んだその時、片手に持っていたクマのキーホルダーの破片がバラバラに弾けた。
「どうして僕を見捨てたりしたの……?」
黒い霧と共に破片が集まって形を取り戻し、あっという間に膨れ上がっていく。
「絶対に僕を手放さないって言ったのに……」
そして膨張が収まった時、そこには優に三メートルを超える禍々しいクマが屹立していた。この大きさになると、キーホルダーというより本物の巨大熊みたいだ。
「違うの……私だって手放したくなかった……ごめんなさい……ごめんなさい!」
「志乃! 逃げるよ!」
私は、謝り続ける志乃の手を無我夢中で引いて林の中に駆けだした。