イジメのカミサマ
自分の叫び声で我に返ると、私は誰もいない元の教室に立っていた。

私は半ば逃げる様にしてよろめきながら教室を出る。

確かにあれは私の記憶だ。だけど、私はあの場で死んだりなんかしてない!

その時、またしても耳鳴りがして私は頭を抑えた。

視界が灰色に染まり、人気のない廊下で私がさっきの少女に髪を掴まれている。

「ねえ、お金が払えないってどういうこと?」



どうやら今度はカツアゲにあっている様だった。

「お金がないのなら、アンタのこのご自慢の髪を売ればいいじゃない!」



彼女が乱暴に手を揺らし、過去の私の髪がプツプツと千切れていく。

「もうやめて!」



現在の私は見ていられなくて少女に突進する。でも、彼女の体は幽霊の様に虚しく私をすり抜けた。

「もう許して。私を坊主にしても構わないから……それで満足なんでしょ?」



過去の私が虚ろな声で言ったが、彼女はつまらなさそうに笑った。

「ダーメ。そんなことをしてもすぐにまた生えてくるでしょう? 私はアンタ自身を奪い尽くすまでやめないから」



彼女はそう言い残して立ち去る。そして過去の私はゆっくり立ち上がると、廊下の窓を開いて――

「やめてッ!」



そんな私の叫びも虚しく、彼女は虚空へ身を躍らせた。

私が駆け寄って見降ろした先にあったのは、地面を覆う真紅とバラバラになった自分の欠片。

そして千切れた飛んだ指先には、地面に書かれた血文字の……『2』。

灰色の廊下が元に戻ると同時に、私はその場から走り出した。

もうたくさんだ。過去を目の当たりにする度に、私は謎の数字を残して死んでしまう。そんな光景を見続けるなんてこれ以上ない悪夢だ。

だけど廊下を曲がろうとしたその時、扉をドンドンと叩く音がして私は思わず立ち止まる。



「助けて! 誰かここから出して!」
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