イジメのカミサマ
彼女は振り返り、首を振った。

冷静な彼女とは対照的に、私は動揺する。

「それって……ここに閉じ込められたってことなんじゃ……」

「そうなるわね」



一応窓は開くようだけど、見た感じここは校舎の四階。

おまけに何故かベランダもない為、他の教室に移動することも出来ない。

ベランダの無い教室に開かないドア。何者かによって私たちはここに監禁されたのだ。

「どうしよう……どうしよう……」



恐怖のあまりしゃがみ込む私を見て、暦が高圧的に告げる。

「どうもこうもないでしょう。こうなったら脱出する方法を探さなきゃ」

「そんな都合の良い方法があるわけないよ! 私たちはただの非力な女の子なんだよ!」

「チッ……!」



明らかに苛立ちを滲ませるが、暦にも打開策はないみたいだった。

「ねえ、これって何かな?」



その時、志乃が教室の隅に置かれていた段ボールに近寄って中身を開ける。

途端、『わー!』と嬉しそうな声を上げて彼女はそれをこちらに向けた。

中に入っていたのは……少し大きい緑色のカエルだった。

「見て見て~! おっきなカエルさんだよ! シノはクマさんの次にカエルさんが好きなの!」



そう言ってはしゃぐ志乃が抱える段ボールから、カエルが勢いよく飛び出した。

自由の身になったことが余程嬉しいのか、教室の真ん中をピョンピョン飛び回っている。

「ちょっと余計なことしないで! こんなカエルが何の役に立つって言うのよ!」



暦がまたしても声を荒げる。どうしてか分からないけど、よっぽど志乃のことが鼻に突くみたい。

ふと私は段ボールを見てあることに気付いた。

「シノ、ちょっとその段ボールを見せて。底に何か書いてある」

「え?」



私の予感通り、箱の底には黒い太文字で『カエルハトテモシンセツダ』と書かれていた。

「カエルはとても親切……? どういうこと?」
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