イジメのカミサマ
「ごめんなさい、私も思いもしなかったの。手紙とナイフ以外に何か仕込まれてるなんて」



そう告げる彼女の表情は、心の底から言っている様に見えなくもなかった。

ここで事の真偽を追及しても仕方ない……そう判断した私は黙って掌を差し出した。暦は大人しく鍵を乗せようとして――

突然激しく校舎が揺れ、彼女はよろめいた。

「何⁉ 地震⁉」



ただの地震にしてはまるで世界そのものが生きてるかの様に地面がうねり、校舎が体動する。

私は咄嗟に近くの壁に手をついたけど、壁から離れていた暦と志乃はバランスを崩した。

「危ない!」



私が叫ぶと同時に、志乃の手からカエルが放り出されて暦の胸にへばりついた。

彼女は悲鳴を上げて鍵を持った手でカエルを振り払い、そのまま床に倒れ込む。

振動は十秒ほど経ってようやく収まり、私は二人に駆け寄った。

「暦、志乃、大丈夫?」

「私は大丈夫よ……でもあの忌々しいカエルが私の制服にくっつきやがった……最悪……!」



顔を歪めて胸元を擦りつける暦。その後ろでは志乃が窓際で悲痛な叫びを上げていた。

「カエルさん! カエルさん! イヤだよ、こんな所で死んじゃダメ!」

「志乃どうしたの?」

「カエルさんが……! 壁に叩きつけられて、ぐったりしちゃってるの!」



どうやら暦は余程力を込めて振り払ったらしい。窓下の壁に激突したカエルは完全に伸びてしまっている。

「ごめんなさい……せっかく私たちの役に立ってくれたのに……休んだらきっと元気になるから……!」



必死に励ます志乃の言葉を聞いて、私は大切なことを思い出す。

「暦、そう言えば鍵は?」



すると、彼女は胸元から窓に視線を移しバツが悪そうな表情を浮かべた。



「もしかして……」
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