ビッチは夜を蹴り飛ばす。
でも世の中に絶対は、ない。
「…………………ジュリアン帰っていい?」
「ダメ」
女なら腹くくんなさいと言われるけどジュリアン男じゃんって思ったし、目の前に広がるのは要するに、カジノ大国マカオを具現化したようなどでかい建物だった。
夜であれど煌びやかなネオンが照らすお陰でその周りは煌々と光が照っていて、車から降りてきたハリウッド女優みたいなお姉さんやめちゃくちゃお金持ってそうなドレスアップしたおじさんが入り口のサングラスをかけた〝逃亡中〟のハンターみたいな人に何かを見せて中に入っていくから無理無理無理無理って顔を振る。
「あたし無理だよ! ジュリアンはまだしもあたし今日畑から生まれたみたいな格好してるもん!!」
「大丈夫よカワイイカワイイ」
「めっっっっっちゃ棒読み」
それになんかみんなさっきからVIPみたいな専用のゴールドのカードをハンターに見せているみたいで、あれがないとたぶん中には入れない。
「ミレーナの知り合いってあたしが言えば通してくれるはずよ」
「本当に!?」
怖いから勇んで先を行くジュリアンの服の裾を引っ掴んで、入り口に立ったら案の定両サイドに立っていたハンター二人が詰め寄ってきた。うわあ、と萎縮するあたしにそれでも誰より身長の高いジュリアンが睨みを利かせる。
「Invited guests of Milena. pass.
(ミレーナの招待客よ。通してくれるかしら)」
「Name is?(名前は?)」
「Julian.」
それ、あくまで本当の名前なんだ。
へーえ、って思ってたらハンター二人がインカムみたいなもので中と連携を取っていて、あたしたちに振り向くと少し待ってろみたいな仕草をされた。中に入っていくハンター二人を見送って、そしたら扉のガラス張りから中で何が行われてるかを少しだけ、見る。
「裏カジノ、って言うの? イカサマ、ズル、し放題。金を積めば積むだけ権力ってカードが付いてくる。そうね、政治家だったり、女優もそう。生き延びていくのに、保険を得るためのゲームなんだそうよ」
「………ミレーナはその、何?」
「この裏カジノの支配人」
青ざめていたら扉からハンター二人が出てきた。中にどうぞ、の所作をするから二人並んで入ろうとするのに、瞬間あたしもジュリアンもハンターに取り押さえられる。
「ちょっと!? 何すんのよ!!」
「Julian.」