ビッチは夜を蹴り飛ばす。
  

「いっ、いーよ硯くんはそんなことしなくて!」

「おれだけ付けられるのとか不公平でしょ」
「不公平!?」


 どこがいい、ってほのかに笑った顔が言うからえ、え、って動揺してたら服の襟に指をく、って引っ掛けられた。

 今日のあたしは肩出しの黒のオフショルで、首にも生地があって一見チョーカー付けてるみたいで可愛くなるやつ、日本でもお気に入りでたまの遊びの時に着てたけど片方の肩しか出ないし首の生地との兼ね合いで洗濯面倒だよこれ鳴、って硯くんに言われてから(ハンガーかけるとこどこってなるらしい)控えめにしてたけど、今日に限って着てしまった。

 至近距離でどこにしよっかな、って感じで目であたしを眺めてた硯くんが首、鎖骨、まで眺めて最後に少しだけ服をずらされて飛び上がる。


「胸」

「硯くんそれはだいぶえろい!」
「首とか鎖骨だったら多分見えるよ、あとおれが付けたら一週間は取れない」
「そんなに!!」


 どんな威力だと思うけどキスマークって上手い人がつけたら3日から一週間はそのまんまって書いてあった。じゃあ硯くん上手いのか、てか付けたことあんの、え、だれに? とかぐるぐる雑念がよぎって複雑な顔をしてたらちゃんと座り直した硯くんが軽くあたしの胸に触れるから、ゎって小さく声が漏れる。

 胸の付け根のとこにつけるみたいで、自然と唇が触れたときぞく、って震え上がってしまった。そのままさっきあたしがしたのと同じように軽く舌で舐めて濡らされて、位置が位置だけに顔を逸らして熱い吐息をついてたらめい、って下から叱られる。


「…今そういう時間じゃない」

「だ、って」
「顔逸らさないで」
「っ、ん」


「つけるとこちゃんと見てて」


 もう既に紅潮して薄く開いた目でこく、ってかろうじて頷いて、触れた唇にそれでもひぅ、って声が漏れる。はじめは擽ったくて笑いそうになったけど柔く下から胸に触れられてるからそう簡単にはいかなくて、軽く唇に挟まれたと思ったらちくん、と痛みが走って目を閉じてたらついたよ、と言われた。

 へ、って目を開けたら指差されて、その手があたしの髪を少しだけ避けてここ、って指し示す。思い切り下を見れば確かに胸の付け根に赤い痕がついていてこれはえっと、だいぶえろい。


「………す、すごい」

「もう出来る?」
「たぶん!」
「つけてみ」


 今度こっち、って付けやすいように自分の襟をくって指で引っ掛けて鎖骨を向ける硯くんを見たら色気がすごくて普通のひと卒倒すると思うんよ。絶対それよそでしないでよねってよびよじ近寄って同じようにかぷって吸い付いたらやっぱりなんか違くて思うように痕が付かない。

 そういやあたしの自主練では23回やったけどついたのは二の腕につけた最後のたった一回だけだった。


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