ビッチは夜を蹴り飛ばす。
 

「……………なんでこんなことなってんのよ」


 翌日。

 ちーん、と二人してそれぞれの部屋のベッドで冷えピタにマスクをつけたあたし及び硯くんは40度の熱に魘されるハメになって、看病に駆けつけ廊下に座ったジュリアンに声を振り絞る。


「なんでこんなことなってんのよ!!!?」

「若いから…」
「若さ理由にすんじゃねえ!!」

 めっちゃ男の声で怒鳴るやん、とごほごほするあたしと反対側の部屋から硯くんの声はしなくって、完全にあたしとのことで悪化して苦しんで唸ってたわけだけどでもこれ元を辿ればジュリアンに行き着くわけでして。

「…ジュリアン嫌なら大家のマリーおばさん呼ぶからいいよ帰って…(うるさいし)」

「語尾聞こえてんのよ! あんたたち二人にさせたらほんとロクなことないからここで見張っとくっつってんでしょ!」
「マリーおばさんがいい…」
「Shut up!! スズリもメイも!! 完治するまで絶対接触させないからね!!」

「硯く〜ん」














 俗に言う近くて遠いってこれのことか、って二人の間に隔たれたジュリアン警備のせいで完治まで本当に硯くんとの接触を許されなかったし、やっと風邪が治って元気な姿でお互いに会えたのは、それから三日後のことだった。


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