ビッチは夜を蹴り飛ばす。
Day.14
実は高校入学当初から翠ちゃんについていたそれを見るたび羨ましいって思ってたしそれだけで大人びるからずっと大人の仲間入りをしてみたくて、どうやってしたの、って聞いてみたかったけど結局目で追うばっかで最後まで聞くことができなかったことがある。
憧れはいくらでもあったけど何より自分がつるんでたともやゆきもそう言うタイプではなかったし何より校則違反だったから、でもだめって言われるとやりたくなるのが人間の性ってやつでして。空のバスタブで深夜1時、直前までトライしてビビり倒して挫折すること22回。
これはあたしが前から憧れていて誰にも言わなかった秘密のこと。
イヤホンを付けてPC画面に集中しながら首を回す。
そのまま適当に次の資料に進もうとしたらすんごい勢いで視界ごと身体が反転した。
「硯くん!!」
「いった」
「何やってんの!? あー! わかったエロサイト見てるんでしょ!」
「おれそんな溜まってないし」
え、溜まってない割に硯くんいつもさぁ…とかボヤく鳴のことは押しのけてよっこいせと起き上がる。イヤホン付けてたから全然気配に気が付かなかった、ってイヤホンを取ってぱたんとノートパソコンを閉じると怪しい…って唇に指を添えてジト目をくれられる。
「まぁいいや。硯くん、今ひま?」
「暇じゃないけど、まぁ暇」
「どっち」
「なに? 買い物?」
たしかにそろそろストック無くなって来たけどマーケット行く? って立ち上がってキッチンに向かおうとしたらくん、と服の裾を掴まれた。
言わずもがな掴んだのは鳴で、座って向かい合って胡座をかけば鳴が畏まった様子で正座する。そんで一つの、咳払い。
「あ、あの、硯くんにお願いある」
「うん?」
「…けて」
「え?」
なんて、って軽く顔を傾けたら大きな目が少し泣きそうな顔でおれを捉える。で、長い睫毛を伏せてもう一度顔を上げた。
「穴開けて」