ビッチは夜を蹴り飛ばす。
「どうやって?」
「え」
「誘導して」
「え」
えええ? って半笑いで首を傾げたら手を繋がれてリビングに誘導された。そう、ここまでのやり取り全部あたしの部屋の前で繰り広げられていたことなので、
リビングのカーペットの上、人をダメにするクッションの上に硯くんが座って、手を繋いだままのあたしもすとん、と硯くんに跨って座る形になって。
ひょん、とアンテナみたいに立ったちょんまげがかわいいから手で少し触ったら、その合間から唇を奪われた。
ちゅ、と何度か短いキスをされてぽす、と肩あたりに頭を置かれる。なにこれ。甘えてるのか!
うりうり、って胸元ですりすりしてくるからくすぐったくてやー、って少しのけぞったら鳩尾の辺りに硯くんが顎を乗せる。
「どこをどう触ってほしいかちゃんと言って」
「、…!」
なんてやつと思うから、あたしの腰を抱いていたその片手を後ろ手ではいで、それから、えっとどうしよう。この手をどこにやれば? とかぐるぐるしていたら硯くんが軽く笑って、指先であたしの服を少しだけ開くようにした。
その日はシャツを着ていたから抜き襟にしていたそれがする、と片方の肩から剥がれて、黒のタンクトップが露わになる。…これは明らかにあたしの言いつけじゃない、ほんとうに誘導で。
目が「で?」って聞いてきてるから掴んだ手をそのままぐっ、と自分の左胸に押し当てたら、そのまま目を閉じて下唇を噛みしめた。
「………すごい心臓の音」
「…っるさい、な、ぁっ」
すこし勝手に動くだけでぴくん、と跳ねてしまうあたしの挙動を見逃さないと言わんばかりにやわやわと手を動かされてぴりぴりと甘い痺れに喉が鳴る。
硯くんの触り方がどうとかじゃなくて。いや、それもあるんだろうけど、何より大好きな人に触れられてるって事実が人の心を突き動かすんだと思う。
事実手はそこまで動いてないのに目の前で見られててその手が硯くん、って理由であたしは勝手に欲情してた。可愛い見た目に冷たい目のギャップに陥落しそうになる。それで服の上から胸と先を親指で掠められてぴく、って跳ねてあつい吐息をつく。
「…胸だけでよがりすぎ」
「だ、って」
「知ってる、好きだもんね」
「ひゃ」
「俺が教えた」
ちう、って胸の付け根に口付けられてそこに綺麗な赤い痕がつく。ついた、って呟いて、その唇がキスマークの上を撫でていく。
痺れる。壊れる。
「、ん…っすずり、くん」
「なに」
「…っ…たりない、」
「ふふ、うん」
「…もっと、して」
胸の上で柔く動いていた手を掴んで指の節に口付ける。それできて、って伝えたら、目を細められた。